「じっと座っていられない」「食事中も体を動かしてしまう」──そんな子どもの姿に、どう関わればいいのか悩んでいませんか? 実は、落ち着きのなさの背景には、性格やしつけだけでなく、「発達の特性」や「座る環境」が深く関係していることがあります。今回は、発達障がいのある子どもたちの行動を理解しながら、日常生活をラクにする「椅子選び」のポイントを、私が関わってきた子どもたちの事例とともに紹介します。

落ち着きがないのは性格のせいじゃない
「うちの子は落ち着きがない」「集中力が続かない」と感じると、つい「性格」や「やる気」のせいにしてしまいがちです。けれども、実際には、発達の特性や体の感じ方が影響していることが多いのです。
たとえば、ADHD(注意欠如・多動症)のある子どもは、まわりの音や光などに意識が向きやすく、じっとしていることが苦手です。体を動かすことで気持ちを落ち着けたり、頭の中を整理したりしている場合もあります。つまり、「動いてしまう」のではなく、「動くことで安心している」こともあるのです。
私が関わったある男の子も、授業中に立ち歩くことが多く、先生に注意されることが日常でした。でも、静かな環境で、一人分のスペースをしっかり確保した机と椅子を用意したところ、次第に立ち歩く回数が減っていきました。環境が変わることで、行動そのものが落ち着くというのは、決して珍しいことではありません。
「座る」が難しい子どもたちの共通点
一見簡単そうに見える「座る」という動作ですが、実は多くの力を使います。背中やお腹の筋肉で体を支え、足でバランスを取り、目や耳で周りの情報を受け取りながら集中する――それらが同時にできてはじめて、安定して座ることができるのです。
しかし、発達の特性をもつ子どもの中には、この連携がうまくいかない子がいます。体幹の筋肉が弱い、感覚の感じ方が強すぎる(または鈍い)、空間の感覚がつかみにくいなど、理由はさまざまです。
私が支援してきた中にも、椅子に座るとすぐに前のめりになる子や、反対に背もたれにどっかりもたれてしまう子がいました。よく見ると、足が床につかず、ぶらぶらと浮いていました。これでは安定せず、自然に体を動かしてバランスを取ろうとします。その姿を「落ち着きがない」と感じることもあるでしょう。
でも、実は「落ち着きがない」のではなく、「座ることが難しい」だけなのです。こうした子どもたちに必要なのは、叱ることではなく、「座りやすい環境」を整えることです。
椅子が変わると、行動も変わる
子どもの行動を支えるうえで、椅子はとても重要です。足がしっかり床についているか、机と椅子の高さが合っているか、座面が安定しているか――こうした小さなポイントが、集中力や姿勢に大きく影響します。
以前、私が関わった小学2年生の男の子は、学習中に体を左右に揺らしたり、椅子をガタガタ動かしたりしていました。試しに、足の裏がしっかりつく高さの椅子に変え、机とのバランスを整えてみたところ、驚くほど落ち着いて課題に取り組めるようになりました。
この経験をきっかけに、私は「イーチェスク」という学習机と椅子の開発に関わりました。発達の特性を持つ子どもが安心して座れるように、形や角度、安定感を工夫しています。椅子は単なる家具ではなく、子どもが安心して過ごすための「支援ツール」だと感じています。
椅子を変えることで、行動が変わる――これは魔法のように聞こえるかもしれませんが、体の安定が心の安定につながっている証拠なのです。
できることから始めよう──家庭でできる椅子選び
「専用の椅子を買わなければいけない」と思う必要はありません。家庭でもできる小さな工夫で、子どもが落ち着いて座れるようになります。
たとえば、足が床につかないときは、足元に段ボール箱や台を置いて安定させます。座面が滑るようなら、クッションやタオルを敷くとよいでしょう。机が高すぎると感じたら、座布団で高さを調整するのも効果的です。
また、椅子だけでなく、周囲の環境も大切です。テレビやスマートフォンなどの刺激を減らし、視界に余計なものが入らないようにするだけで、集中しやすくなります。
環境を整えることで、子どもは自然と「できる力」を発揮します。大人が無理に「落ち着かせよう」とするのではなく、「落ち着ける環境をつくる」ことが何よりのサポートになります。
まとめ
子どもの「落ち着きのなさ」は、性格でも努力不足でもありません。感覚の違いや体の発達のバランスが原因で、「座ることが難しい」場合が多いのです。だからこそ、叱るよりも「座りやすい環境」を整えることが大切です。
椅子を変えるだけで、集中しやすくなったり、姿勢が安定したりする子はたくさんいます。小さな工夫が、子どもの大きな成長につながるのです。
「落ち着かない子」ではなく、「落ち着けない環境」があるのかもしれない――そう考えてみると、関わり方も変わりますね。
みなさんのお子さんには、どんな椅子が合いそうですか? ぜひコメントで教えてください。

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